100年前に発見された白鳳の幕開けを告げる華やかな弥勒 TanaCOCORO[掌] 金銅弥勒
 1918(大正七)年、大阪にある寺院の蔵の中で発見されたという、小さな金銅仏。

 日本の美術史に突如として現れたこの像は、白鳳時代(飛鳥時代後期)の弥勒仏として国の重要文化財に指定されました。現在は月に一度(毎月18日)だけ開帳される秘仏となっています。

 隋代美術の影響を受けたとも言われるこの像の、可憐で清新な造型を手のひらサイズに再現しました。
TanaCOCORO[掌] 金銅弥勒 白鳳時代の幕開けを告げる小金銅仏

白鳳時代の幕開けを告げる
小金銅仏

 モデル像の台座框に記された「丙寅(へいいん)年」の銘。これは西暦666年と解され、ちょうど白鳳文化が芽吹き始めた時代です。

 仏教が伝わった飛鳥時代の前期から後期にかけて、仏像は硬直的な作風から丸く膨らみを帯びた作風へと変化しますが、この像はその基準作として語られます。

 当時の先駆的な造型であったと考えられ、「弥勒」と明記された最古の作例でもある、大らかな白鳳文化の息吹を感じる弥勒菩薩像です。
TanaCOCORO[掌] 金銅弥勒 仏像新時代を告げる、華やかな弥勒像

仏像新時代を象徴する
華やかな弥勒像

 この像の頭上には三面頭飾と呼ばれる飾りがつけられています。白鳳期以降の仏像に見られる宝冠の形です。正面に花を上下に重ねる大振りの装飾が付けられ、側面は蕨手(曲線の一端がワラビのように渦状に内側に巻いている文様)を重ねて翼のように造形されています。

 また天冠台や瓔珞、腕釧、臂釧、裙の縁にいたるまで、小さな円を繋げた文様のタガネ彫りが入っており、像の存在感を確かなものにしています。両足のライン上には菩薩像としては唯一縦状の連珠文が刻まれており、一層の華やかさを演出しています。
TanaCOCORO[掌] 金銅弥勒 仏像新時代を告げる、華やかな弥勒像

台座に記された銘の謎

 モデル像の台座框には62文字の銘文が記されています。
解読不能な文字もあるため解釈は様ざまですが、「僧や知識人、寄進者など118名が中宮天皇の病気平癒を願って弥勒像を造像した」という内容が記されています。

  しかし今日に至るまで、実際何年に制作されたのか、どの寺院に伝わってきたのか、など多くの謎が未解明のままで、明記された丙寅年に天皇が即位していないことから、「中宮天皇」が誰を指しているのかも分かっていません。

三面頭飾
(さんめんとうしょく)

正面と二側面に装飾をあしらった華やかな宝冠。上下に花を重ねる正面の頭飾が特徴的。

半跏思惟

いかにして衆生を救うかを思索するポーズ。頬に添えられた右の手のひらが正面を向く姿が珍しい。

腰佩(ようはい)

腰につけられた装身具。これも別造りで取り付けられている。

冠ゾウ*糸偏に曽の旧字体
(かんぞう)

頭飾から伸びる紐状の飾り。別造りで取り付ける様式は当時進んだ技法。

連珠文

小さな円を並べる、隋時代を中心に流行した文様。当像では裙に連珠文に由来する半截(はんせつ)の花文が線刻される。日本では最早期の作例で、タガネ彫りの味わい深さを感じさせる。
 
TanaCOCORO[掌] 金銅弥勒 仏像新時代を告げる、華やかな弥勒像 TanaCOCORO[掌] 金銅弥勒
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